社会復帰への第一歩
趣味の世界も社会生活
9月末以来、漸く外の世界へ出てみた。
未だに口をきいたのは、家族と医者だけ。
買物は棚の配置もよく知るスーパーに決まった物を買いに行くだけ。悩みも選びもしない。誰とも話さない。目線もあわせない。子供の「初めてのお買物」以下の買物レベルだ。
電話も呼び鈴が鳴ると、本気で「心臓一瞬止まる」位に怯え、でられない。
見知らぬ人や非通知は勿論だが、「知った人」だと尚更のこと。息まで詰まる。暫く動悸は止まらない。
相手への申し訳なさとか、電話を取れない自分の状態の悪さとか、社会性の無さに、自己嫌悪と自虐の沼に嵌まりこむ。
そんな状態だが、抜け出したいと思うのだ。
鬱の泥沼から、少しづつでも這い上がりたい。
よく「好きなことでもやればいい」という事も耳にするが、好きな趣味の世界でもハードルは高く、超える事は容易ではない。
行こうと思ったのは、メール確認だけ出来るようになって、1月の練習案内が来ていたからだ。
だが10月に「本番用の揃いの衣裳が届いているので、取りに来るように」との連絡メールもあったので、ずっとシカトしているようで、かなり気不味い。
去年同時期など本番当日に大鬱突入して、ブッチした前科があるので、「もう辞めてくれ」と言われるのではないかと怯えてしまう。
去年やらかした後、同じパートの上席には冷たくあしらわれ(←当然)、散々メンバーにも「あの時は困った」と愚痴られ(←当然)、漸くまともに口をきいてもらえる様になってきたと安堵した直後にまた大鬱突入した。
社会の信頼を失うというのは、仕事に限ったことではない。
なんで「休みます」の一言が言えないのか。
何も「精神病んでて」など言わずとも「体調悪い」とでも言えばよかろうに、と思うが自分の大鬱は「完全対人拒否」どうかしたら「いきなり冬眠症併発」なのだ。
去年は9月28日に自分の意思で新幹線に乗って出かけているのに、30日には鬱急降下。対人恐怖症を拗らせて、過眠そのまま冬眠。
大鬱の時の自分が社会との繋がりをぶった斬りまくるのを充分認識しているので、自分は大鬱になるのが怖い。これでも模索している。
姑息にも「最初に会費を払えばいきなり「除名」を言い渡されないのではないか」などと思いつき、会費を封筒に入れて準備する。
「衣裳を誰かに会う前に車に積めば、「置きっ放し」を咎められないのでは」といつもより早く家を出ようと画策する。
コンタクトを着けるのも、3ヶ月振りだ。
明るく、クリアーな世界に躊躇する。
「まだ耐えられなかったか」と気持ちが尻込みするが、ここで退いては先が無いどころか悪化しかねない。
そこから先は思考を停止した。
考えれば考えるほど、気持ちは萎えるし、「行かない」という選択肢しか無くなる。
だからもう、何も思わない。考えない。
計画通り、衣裳箱を探す。取りに来ていないのは、自分だけではなかった事に大いに安堵する。
最初に会ったのが、親しい人であったのにも助けられる。
「あけまして、おめでとうございます。今年も宜しくお願いします」
頭を下げれば、返してくれる。
よかった。挨拶出来た。
駐車場に逆戻り中の自分の行動を問われはしたが、「衣裳を先に車に……」と答えても「ああ、そう」だけで、「今まで取りに来なかったのか?」とか恐れていた事は何も言われない。これが背中を押した。走り出したい気さえする。
口をきいた事には入らない、不特定多数に「おめでとうございます。今年も宜しくお願いします」と頭を下げながら部屋に入る。
予想に反して、既に多くの人が居たが、怖れている上席の人は居なかった。その人へは大変申し訳ないが、お陰で普段通りに振舞えた。何も無かったかのように。
実は「もう、余計な口はきくまい」と決めていた。何も話さない。挨拶だけ。
だが、隣に座った人から話しかけてきた。
「龜寝子さんって、××に住んでるんでしたっけ?」
そのまま会話が進む。時折笑顔も見せてくれる。
練習の際も、自分が恐る恐る声を上げて提案したことが、受け入れられる。
そんな偶々の、小さな事に勇気を貰う。
「案ずるより産むが易し」ってことかもしれない。
遅れて上席が来られたが、恐れはかなり軽減されていた。
練習の時間が経つに連れて、自分の技術には溜息ばかりだが、きっと自分は興奮していた。
「明るくなる」という感じとも違う。「軽躁に傾く」というのも違う。「元気になる」というのとも違う。
語彙力に乏しいが、興奮するが一番近い気がする。
順番的には逆だが、解散になって、同パートの一人一人に挨拶した。
「今年も宜しくお願いします」
漸く他人と交流出来た。
嬉しい気持ちの流れを力に、関門の上席へ会費を渡す。ついでに「今年も宜しくお願いします」とべったり頭を下げる。
「衣裳、持って帰ってね。今年も宜しく」
夜が遅いとか、起きれないとか、睡眠への不安とか悪い事は何も感じない。
帰りは手まで振ってみせた。
一歩踏み出せた。この世界に。
趣味の世界とはいえ、ここで他人と交流出来なかったら、仕事の世界なんてやっていけない。
まずは一歩。踏み出し易い社会から。
狭く閉じられた、趣味の世界とはいえ、立派な社会。
これを足掛かりに、何とか鬱を越えて行きたい。
趣味も立派な社会生活
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明日はガス工事で9時から半日は業者が家にいる。
ベルソムラは1/3錠にしよう。ルネスタは2mgにして入眠に賭けよう。
(薬の自己調整許可あり)
2019(平成31)年1月10日(木)